あたり日記:2006年1月1日

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【2006年1月1日(日)】


Caine「は~い皆さん、年明けですよ~。大丈夫ですか~?」


平等院「大丈夫。」


美月「大丈夫。」


風「大丈夫です…にゃ」


榊原「大丈夫ですよ。」


窒素「そーなのかー」


Caine「…よーし、無事に年を変えられたね。」


窒素「そーなのかー」


Caine「みんな、どうだった?」


平等院「まあ…特に問題はなかったけど」


美月「…私も」


風「…にゃ」


Caine「まあ、こんなもんだよ。こんなことを毎年やってもらいたいわけ」


榊原「…なるほど」


Caine「年越し前とか年越しとかは談笑してていいし、時間が許せば。協力してもらえる?」


榊原「もちろん構わないよ」


美月「…大丈夫です」


平等院「…あ、ああ、いいよ」


Caine「まあ、今回は一回目だし、談笑することも無いよね。解散で良いかな?話すことがあれば別なんだけど…」


平等院「……」


美月「……」


榊原「……」


榊原「……じゃあさ」


Caine「ん?」


榊原「みんなさ、『辛酸』って知ってる?」


美月「…辛酸?」


平等院「辛酸って、あの、『辛酸をなめる』とかって言う、あの?」


榊原「そうそう。辛酸は酸性の化学物質で、舐めると辛いんだよ」


平等院「は?」


榊原「化学式はKRaI。1899年にピエール・キュリーが歯磨き粉と間違えてラジウムを口に含んだ事が発見のきっかけだよ」


平等院「いやいや、辛酸は化学物質じゃないでしょ」


榊原「何を言っているんだい、実在する化学物質だよ。さっき君も認めたじゃないか」


平等院「いや、あれは…」


Caine「平等院君、これに反論するようでは君は修行が足りないよ。ここでは彼が定規だからね、彼の言うことに反論するのは叛逆的だよ」


榊原「コンピュータ様の仰る通りですよ!やっぱり貴方は修行が足りませんね」


平等院「えええ…」


風「…にゃあ」


榊原「私から言うことはこの位ですね。他に何かなければ解散しても良いのでは?」


Caine「そうね。じゃあ、みんな良いね?よし!(パンッ)解散だ!

あ、そうだ、解散の前に。

皆に”Deity-sized portals”を一人一つずつ配っておくね。

これは皆をここに吸い込んだ時に使ったportalの小型携帯版だよ。

ここから皆が帰る時と、一年弱後にまたここに来る時の二回分の、往復にしか使えないから、なくさないように大事に保管しておいてね。来年になったらまた新しいのあげるからね」


榊原「Deity-sized portals(神の大きさのポータル)?普通のportalsより小さいのに、神の大きさなの?」


Caine「お米一粒には千人の神様が詰まっている、と言うでしょう?神様ってのは案外小さいものなのよ」


榊原「なるほど」


平等院「は、はあ…」


Caine「あ、あとここの場所を教えておくね。ここは北緯36度59分1秒、東経138度49分13秒、標高296m付近。だいたい新潟県南魚沼付近だよ。あと、今渡したDeity-sized portalsは、この建物の横にテレポートするようになってるから、次からはこの建物の、ここ、322号室まで上がってきてね」


榊原「ここ、新潟県だったのか…」


Caine「じゃ、改めて解散しましょうか。

最後はみんなで、Happy New Year!って言いながら一斉にDeity-sized portalsを使いましょう」


風「それじゃあみんな、さよなら」


Caine「Happy New Year.」

榊原「Happy New Year~」

平等院「Happy New Year…」

美月「Happy New Year!!」

窒素「Happy New Year?」

風「Happy New Year―」



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美月「………」


榊原「………」


美月「ポータル、使わなかったの?」


榊原「…貴方こそ」


美月「…なんか、ああ言う時って使うと見せかけて使わないもんだと思ったから」


榊原「…私も、ですよ」


美月「…でも、私達だけですね、使わなかったの」


榊原「…そうですね」


美月「…ふふ」


榊原「…ふふふ」


美月「…なんだか気が合いそうですね、私達。折角だから、ちょっと外に出て見ませんか?」


榊原「…ふむ。そうですね、いい考えです」


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美月「うわ、さむー」


榊原「寒いですねえ、新潟だからね。雪が積もってる。今は止んでるみたいだけど」


美月「わー、星が綺麗だね」


榊原「そうだねー。ポラリスでも探してみる?」


美月「ねえねえ、榊原さん、だっけ、かなり若そうに見えるけど、何歳?」


榊原「ん?10歳ですけど」


美月「ええ!?私と同い年!?じゃあ、じゃあ、小学四年生?」


榊原「ん、そうだよ」


美月「誕生日は?」


榊原「11月28日」


美月「ええー!私11月21日だよ!

誕生日一週間しか違わないんだね!」


榊原「一週間も違う、と言う見方もできるかもしれませんけど」


美月「いやー、それにしても、アロンソ・キハーノだの伝説の騎士だの、すごそうな自己紹介してた割に私と同い年とはね!びっくりだよ」


榊原「伝説の渋面の騎士ね!それは本当だよ!」


美月「はいはい。やっぱり、貴方、面白いわ!私と気が合いそう」


榊原「そ、そうですか?」


美月「じゃあさ、ちょっと暗号解いてみない?」


榊原「暗号?」


美月「そ、暗号。こないだ作って私の友達に出題したんだけど解けなかったみたいでね。どう?解いてみない?」


榊原「ほう、どれどれ、ちょっと解いてみようか」


美月「ちょっとまってねー…

『1-24-13-10-56-16-104-56゛-112-4』

これでどうだ!」


榊原「…ふーむ…」


美月「…どうかな?」


榊原「………………………あけましておめでとう、かな?」


美月「おお!当たりだよ!どうしてわかったの?」


榊原「この手の暗号は大体一つの数字で一つの平仮名で、それで母音と子音に分解して考えるものなんだよね。」


美月「それで?」


榊原「それで、数字にはやたら偶数が多いし、2を多く素因数に持つ物が多い。それで、2をいくつ素因数に持つかを考えたのさ。そうしたら、おそらく、ア段は0個、イ段は1個、ウ段は2個、エ段は3個、オ段は4個、2を因数に持つようになってるんだろう。

それで、アカサタナハマヤラワに1,3,5,7,9,11,13,15,17,19を当てはめて、母音と子音の積を平仮名に該当させてるんだろう?そうすれば、あけましておめでとう、と読めるわけさ」


美月「……正解だよ。完璧に正解!まさかここまでパーフェクトに正解してくれるとは思わなかったよ!やっぱり貴方とは気が合いそうだなあ!」


榊原「ふふ。そうですか?


私もそう思いますよ。」




美月「あはは。


私、貴方となら良い友達になれそうだなあ!」



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A「いやー、まさか貴方があの暗号を、それも完璧に解いてくれるとは思わなかったよ!びっくりしたなあ」


S「まあ、私もあれは自分でも驚きましたね」


A「あの、322号室に始めて行ったのもあの時。

貴方や、他の皆と始めて出会ったのもあの時。

あれから毎年、貴方や、他の皆と、あそこで一緒に年を越したの、すごく、すっごく、楽しかったなあ。


本当に、楽しかった。」


S「…そう…でしたか。」


A「………………………」


S「………………………」


A「………私ね、」


S「ん?」


A「私ね、本当はあの322号室とさよならしたくないなあ。

お別れしたくない。

あそこで二度と皆と年を越せないなんて、そんなの嫌だよ。


ごめんね、



私、




貴方と一緒に、





皆のところへは行けない。







S「………え?」




S「…いない…」


S「あいつ!失踪しやがった!

この急いでる時に!」


ブーッ ブーッ


S「…なんだ?電話?」


S「はい、もしもし」


H『もしもし!もしもし!にゃ!』


S「あ、ああ!?どうしたの?」


H『コンピュータ様が、市民IDEALが失踪したみたいだ、って言うから、市民DEVELOPINGの携帯電話を借りて電話しろって…!』


S「ええ!?なんでコンピュータ様とか市民DEVELOPINGが電話しないのさ」


H『コンピュータ様はコンピュータ様だから通話は出来ないって、市民DEVELOPINGはいまちょっと、私のせいで幸福語しか話せないから…私しか話せる人がいなくて…!』


S「ええ、なんだか状況が想像出来ないけど、わかったよ、それで?要件は?」


H『えと、コンピュータ様曰く、市民IDEALが管制下から外れた?そうなので、市民IDEALをこれから捜索するそうです』


S「はあ、またかよ、世話の焼ける奴だな全く」


H『市民MEASUREさんは引き続き電車でこちらへ向かっていて欲しい、ということです』


S「電車乗ってるのもお見通しって訳ね…

待って、そんな悠長なこと言ってたら年明けるまでに市民IDEALが見つからないよ!」


H『それは対策を講じるそうです、なんでも時間の流れを遅くさせるとか』


S「ほう?」


H『ほとんど文字通りの意味です、世間的には年越しを迎えるでしょうが、まだ年越しにはなっていません。22時か23時か、そこらです。それで時間稼ぎをしているうちに、市民IDEALを見つけ出します。

でも、貴方はそのまま電車に乗ってこちらへ向かう位しかすることはないらしいです、貴方の乗っている電車はとても時間に正確なので、時間の流れを遅くすれば到着もそれだけ遅くなります、だから貴方は年が本当に明ける位の時刻にしか、こちらに到着することはできません』


S「……なるほど」


H『それでは、私は捜索に協力するので、この辺で話を切り上げますにゃ。ごきげんようにゃ!』ぷつっ


S「……にゃ?」


S「…まあいいか」


S(それにしても全く、また失踪するなんて…世話のかかる奴だ。それで私は電車に揺られていることしかできないなんて…暇だなあ…)


S(…気持ちはわかるけどね。私だって、皆と過ごした322号室を離れるのは嫌だ。他の皆はどうだかわからないけど…)


S(…まあ、仕方ないか。色んな意味であいつは理想的だからなあ…)


S(…さっきまであいつが話してくれた昔話、あいつから話されなくてもほとんど私も知ってるんだよね。前にあいつから聞いたり、実際に自分が立ち会ったりしたから)


S(何を隠そう書記係だしね、私。昔の話なんて一人でもできるんだ)


S(…どうせ暇だからなあ…あいつは失踪しちゃったけど…


……昔の話の続き、一人でさみしく続けますかね)



『ーーー次は、本庄早稲田本庄早稲田、です』



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前編、おしまい。

つづく。

つづき:1月上旬中には公開予定